『北の国から’98 時代』草太が描いた夢と現実 奔流に散った粋な奴 【前編】

こんにちは、ふじみるです。

6月の大阪地震に続き

7月の西日本大豪雨がおきました。

多大な被害に遭われてしまった方々に

心からのお見舞いを申し上げます。

無念の思いでお亡くなった方々への

ご冥福をお祈り申し上げます。

今年の夏の暑さは異常な熱さですが、

この現象は北半球の国々にも波及しています。

自然災害とはいえ、人間社会のおごりや

環境破壊も影響していると思います。

自然の中では人間の存在なんか

ちっぽけなものにすぎません。

繰り返される大自然のうねりを止めることは出来ません。

謙虚に、知恵を出し合うしか

人類が生き残る術はないと思っています。

今回、紹介する

「北の国から’98 時代」は、

ひとつの結婚が巻き起こす人間模様です。

見え隠れする

ウソと本音の悲・喜劇をお楽しみください。

・蛍の無心

ファ-ストシ-ンは、

蛍のところに正吉が訪ねてくるところからです。

駆け落ちした蛍と相手の先生が

こじんまりとやっている診療所に

正吉が仕事の途中に立ち寄ったわけです。

お互いの近況報告を交わして

「元気で」

ふたりは、幼なじみの気楽さでそのまま別れます。

時は経ち、蛍が富良野に姿を現わします。

お金を貸して欲しい、

理由も言わない蛍の不審な噂とともに。

中畑のおじさんのところから始まり、断られ

純にも蛍は無心します。同席していた正吉も心配顔。

脈がないと踏んだ蛍は、

亡き母の妹の雪子にもそれとなく匂わせますが、

雪子にはそんな余裕はないと判断した蛍でした。

どことなく、切羽詰まっている。焦っている。

・草太の思いやり

乳牛の早期分娩手術にともなって

やっとのことひとつの生命が誕生する光景。

草太の牧場で

その現場を離れたところから蛍は見ていました。

一仕事すませた草太は、何気なく顔を上げると

蛍をみつけます。

喜び勇んで飛んでゆく草太に抱きしめられる蛍。

蛍は、素直には嬉しい表情を浮かべていませんでした。

「草太兄ちゃん、お金貸してくれる?」

突然の蛍からのお願いに草太は

「いくらいるんだ?」

「できれば、20万円くらい」

「そんなもんでいいのか」

草太は、気持ちよく引き受けるのでした。

今や、大規模農場の経営拡大に意欲を燃やす

草太にとっては何でもない金額。

それよりも、自分を頼ってきてくれた蛍が嬉しかった。

「なんに使うんだ?」

野暮な質問を投げかける草太には

だいたい事の察しはついてはいた。

蛍は、

「赤ちゃんがお腹にいるの」

「産むのか?」

「うん。産んで育てるの」

いさぎよい返事に迷いはなかった。

草太は、その子のほんとうの父親が

駆け落ちした不倫相手と知り、驚く。

しかし、正直に打ち明けた蛍を

見直し応援することに決めたのでした。

「お父さん、お兄ちゃんには黙ってて」

「まかせろ。俺は、蛍の味方だ」

蛍の住んでいる札幌へ車を走らせながら

草太は、なにかを決断していた。

・草太の命令

考えるより行動が先。

草太は、正吉に自分がいままで生きてきた中で

一番、脳に汗を掻いた考えを一生懸命に話した。

蛍のおなかの赤ちゃんのこと。

不倫相手はこのことは知らないこと。

自分で産んで育てる蛍の勇気。

「俺はそこに感動した」

ポカンと口をあけて聞いている正吉にたたみかける。

「正吉、蛍と結婚しろ。俺のいうとおりにしろ」

蛍は親父さんにとっては宝。

生まれてくる赤ん坊が他人の子と知ったら、ぶっ倒れるに間違いない。

「正吉は蛍が好きだろう?」

まんざらでもない正吉の表情は、好きな証拠だ。

「正吉が蛍といっしょになれば万事うまくいく」

「でも、蛍ちゃんがなんていうか」

「五郎おじさんの息子になりたかったんじゃないのか?」

正吉の一番の願いであり、弱いところであった。

・純とシュウ、そして五郎

草太の計略が進行するなかで

純とシュウの仲は中途半端な立場にありました。

シュウの実家にご挨拶にうかがった純に

シュウの親、親戚の態度はツレない反応。

純は無駄足を踏んだと思いこみました。

「いつもあのような接し方なの、気にしないで」

慰めるシュウでしたが、

ふたりの仲は遠距離恋愛にありがちな

いつ壊れるかも知れない可能性もなきにしもあらず。

シュウの過去にこだわっていた純の気持ちが

消えかかっていた時だけにやるせない純だった。

シュウと二人きりで

奥深い秘湯にまで浸かった五郎は

そんなふたりの事が気になっていた。

ある日、純に黙って

シュウの実家近くのコンビニまで行き、

シュウの気持ちを探る五郎の親ばかぶり。

「お父さん、安心して。純のこと決して離さないから」

「ほんとかい。純のやつ、シュウちゃんが好きで好きでたまらないんだぜ」

そういう五郎も、シュウが可愛くって可愛くって。。

駆け落ちしていった蛍が空けた胸のちっぽけなすきま風を

シュウが注ぐお酒に酔いながら埋める五郎は幸せものだった。

・速攻プロポーズ

草太の計略を聞かされた正吉は不思議に素直に

翌日には、蛍のいる札幌へ車を走らせます。

看護師ではなく、デイサ-ビスの職員をしている蛍。

車窓から蛍をそれとなく観察する正吉。

蛍が仕事を終えた帰り道に、正吉は待っていた。

正吉が来たということは? はは~ん、わかった。

草太兄ちゃんがしゃべった。

正吉はあまり説明する必要はありません。^^

「俺と結婚してくれ。俺の嫁さんになってくれ」

女は、なんにしろ「好き」という告白が欲しい。

もちろん、正吉は告白した。

一枚の古い年賀状を取り出して。

小学生のころ、五郎の家に居候していた正吉には

年賀状が誰からも届かなかった寂しい思い出があった。

そこへ、たった一枚の年賀状が届いた。

蛍ちゃんからだった。

「うれしかった、いつか蛍ちゃんと一緒になれたらと思っていたんだ」

蛍の瞳が潤んでいる。

微笑みを浮かべながら正吉に現実を語った。

「そりゃあ嬉しいよ、けど一人で育てていくことに決めたの」

静かな迫力に、負けそうになる正吉。

「黒板の人間になりたいんだ。恩返しさせて欲しんだ」

遠くの方を眺める蛍はなにも言わなかった。

その夜、正吉は

札幌でスナックのママをやっている母を訪ねた。

開店時間すぐのそのスナックにはお客はおらず

久しぶりの親子水入らずに話しは弾んだ。

「彼女はできたのかい?」

からかい半分にたずねる母に

「結婚したい女性(ひと)がいるんだ」

「ほお。約束はしたのかい?」

「むずかしそうなんだ」

正吉のオデコをつんとつっつくかあちゃんだった。

店内には、加藤登紀子の『百万本のバラ』が流れている。

かあちゃんは、歌の意味を正吉に教えた。

「惚れた女に、男は街中のバラ百万本を贈ったそうなの。

でも、男の恋は実らなかった。失望して命を断ったわ。

男は、それぐらいじゃないといけないさ」

「一本いくらくらい?」

「4、5百円するんでないかい」

カウンターの電卓で、正吉は計算する。

「5億円も掛かるんだぜ!!絶対ムリ」

かあちゃんをにらみつけた。

かあちゃんは正吉の目をじっと見ていう。

「女は、待っているんだよ。ほんとうは」

さんざん男で苦労してきた

かあちゃんのセリフにはぞっとする説得力があった。

・百万本のオオハンゴンソウ

暇さえあれば、花を摘むように

そこらじゅうに密生している「オオハンゴンソウ」を

ニヤニヤしながら刈り集めている正吉はおかしいと

仲間たちからもからかわれている。

あの札幌での

蛍とおかあちゃんが少なからず影響を与えたに違いない。

「お届けものです」

幸せの黄色いオオハンゴンソウが今日も届く。

受け取りのハンコを押す蛍は、

慣れっこになっているようだ。

部屋中に束ねられたバラを

ふ~と満足げにみている錯覚に陥っている。

それでも、嫌な匂いはしない。

それでも、悪い感じはしない。

・にいさんの務め

純にとってお盆明けのゴミ収集はとても辛かった。

それ以上に辛かったのは、正吉から「にいさん」と呼ばれることだった。

お盆期間に正吉はよく外泊していた。

純は、シュウに連絡をするのがためらわれ

けっきょく、アパ-トでゴロゴロしていた。

お盆あけのゴミ収集作業は

普段の何倍も体力を消耗するきつい仕事であった。

その夜、

帰宅した純は、なにもせずぶっ倒れていた。

正吉が猫足で純のところへうなだれて近づいてくる。

「ちょっと話があるんだ」

返事をする元気もない純。

正吉は、純の前に正座して

「子どもが出来たんだ」

急に元気になった純は薄ら笑いを浮かべ

「ヤッベっ。で、どうする?早いとこしないと」

「結婚する」

がバッと起き上がり、正吉をまじまじと見る純。

勇気を出して正吉は言った。

「蛍ちゃんと結婚させてくれ」

純の目は死んでいた。

「俺の妹だぞ!」

純の気持ちすべて吐き出した言葉だった。

正吉の頭を平手で叩くとパンッていい音がした。

ウイスキーを取り出してグラスに注ぐ。

ひとり飲みしようとする。

優しい男は敵にも酒を贈る。

ドンっ。

正座している正吉の前に酒を叩きつける。

自分のグラスに注いだ正吉は遠慮なく飲む。

この野郎っ目で正吉をにらむ純。

「蛍はOKしたのか?」

「してくれた、外で待っている」

「おまえらマジかよ」

「マジ」

穏やかな顔で蛍が言った。

純は運転席に、正吉は後部座席に。

煙草に火をつけた途端、純の煙草を奪い

煙を手で払った正吉は蛍のほうへ純を促すのだった。

「蛍。ほんとうにOKしたのか?」

「した」

富良野で一番のホテルに部屋をとってもらった蛍と正吉。

「おにいさんありがとうございます」

そういわれているようで、足早に退散する純だった。

・五郎の涙

だれの子供か知っているのは

蛍と正吉、そして草太の三人だけ。

純も知らないし

父親の五郎も知らない。

脳みそがぐつぐつ湯だつまで考えた

草太のシナリオが実を結ぶ時がやってきた。

親の許しを得て結婚するのが世間の習わしだ。

その習わしに素直に従った、蛍と正吉。

赤ちゃんができちゃったことは大目にみてください。

正吉は、居住まいを正して

蛍に結婚を申し込んで蛍が受けてくれた。

と、五郎に報告した。

「おじさんの許可が欲しいんです」

五郎に目をあわすことができない三人がいた。

正吉も蛍も純も、固く緊張していた。

蛍の妊娠を隠していた三人がいた。

誰の子供か知っているふたりがいた。

「おやじさん。蛍ちゃんを僕にください」

すべてを引き受ける腹の正吉が

五郎の目を見て、お願いした。

五郎は口をとんがらせ

たれ目を優しく垂れ

額のしわを伸ばし

目を潤ませ

うんうんと頷き

笑って泣いて鼻水をすすり

正吉の手を握り

蛍の肩を抱き

純の奴、と手を握り振った。

おもむろに、その場からはなれて

家の中に入っていった。

正吉、蛍、純。

「ウォ-っ・・・ウォ-っ・・・」

窓ごしから号泣する五郎の背中が震えていた。

亡き妻の令子の遺影が微笑んでいた。

その晩は酒盛りとなった。

正吉と蛍の幸せを祈り駆けつけてくれた

百万本のバラの、正吉のかあちゃん。

雪子おばさん。

中畑のおじさん夫婦。

八人が末広がりの車座に宴もたけなわであった。

その頃、草太は大型トラクターで農薬を撒いていた。

疫病がでた話を聞いて、

疫病を食い止めるため

他人の土地に勝手に乗り込んで仕事をしていた。

草太流の大義名分を振りかざして。

その現場に立ちつくす、

疫病を発生させた土地の所有者。

所有者を後押ししている五郎の姿も、

散布される農薬に呑み込まれていた。

異常に光る

草太の眼は空恐ろしかった。

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