メス猫2匹に感謝とお詫び 不妊手術をしなかった罪と罰

この歳になって、

想い起こすことが自然と懐かしいポエムになるもの。

それは、幼少の頃から気持ちを温めてもらった「猫」の存在です。  

・同窓会

今年、平成29年4月30日

5年に一度開かれる『同窓会』に出席した。

出席者の数も、会を重ねる程少なくなっている。

そのなかで、毎回出席し世話役ぶりを発揮している同級生のSは今回も元気であった。

タコのあだ名にふさわしく禿げてはいるが、昔ながらのやんちゃぶりは、健在。

私のところへ来たと思えば、挨拶代わりに髪の毛をくしゃくしゃにして、からかう。

反撃するにも禿げだから、しょうがない。笑った、泣くほど笑った。くそっ。

・初めて飼った猫「ふじ」

洟垂れ小僧の小学生の頃、Sから生まれて間もない赤ちゃん猫をもらった。

たぶん、狭い額の白の形が富士山に似ていたので「ふじ」と名前を。

父と母は、あまり気にもかけない仔猫だったけど、

僕と弟には、恰好のおもちゃであり炬燵でもあった。

メスのせいか、近くのお寺のおじさん猫「ふた」がよく遊びに来た。

ふじの旦那がふたとは言い切れないものの、初妊娠は流産。

兄弟の布団を真っ赤に染めた事件は、子供心にも悲しくて泣いてしまった。

真っ赤な血がドロドロ流れる様子に驚き、不潔なものに嫌な思いが残った。

不妊手術はしていなかった。そんな金などなかった。

生まれてきた仔猫たちは可愛いものだったけど、ほとんどは、処分をせざるをえなかった。

処分するのは父だった。たらいに入れて川に流したり、遠くに置き去りにしたり

父は、どうしようもないこととして悪役になってくれていた。

優しすぎる父だった。

・家についてくれたふじ

小学6年生も終わりころ、本家から分家して新しい家を建てることになった。

父の親、おじいちゃんの遺言にしたがって、田畑は父の所有するところとなって

その田畑の一角に新築二階建ての家が出来上がった。飛びあがって喜んだ。

猫は、家につくといわれている。

今まで、住んでいたボロ家から約100メ-トル先に新築の家。

そこにふじを連れていくことになるのだが、途中に駄菓子屋があった。

イカ、するめなどが売られていて、ふじは駄菓子屋に興味を引かれる。

引っ越しの途中に、私の抱っこから飛び出して駄菓子屋に駆け込んだ。

後を追って駄菓子屋に入ると、案の定、ご馳走になっていた。

店主が、「わしんとこがええらしいのお」

その言葉を真に受けた私は、ふじを奪い取って一目散に逃げた。

わんわん泣きながらたどり着いた家に、全部の戸締りをした。

中学、高校の頃は、ふじを我が子のように空に高く放っては抱きとめた。

空中で暴れる様は、何とも言えない気分転換に。残酷な勝手な僕だった。

社会人になって2年目の時に、

ふじは自宅で亡くなった。享年15歳。

記憶のなかに、まだ生きている。

・恋人から託された「みみ」

東京から都落ちの形で帰郷し、バツイチ独身同士の恋人関係にある

冬美がどこからか貰ってきた猫。結局は、僕が面倒をみることになった。

耳がピッとたって柔らかく可愛いと、おふくろが「みみ」と名前をつけた。

どこか孤独な雰囲気を持っているほかは、

これといって、何か特徴というものはなかった。

ただ、よく畑からへびをくわえては僕の2階の部屋まで持ってきた。

ねずみも捕まえるのが上手な「みみ」だったが、食べはしなかった。

・処分する、遊ばれる

先代の「ふじ」と同じく、メス猫であった。

避妊手術はしていなかったので、子どもはたくさん産んだ。

処分役は僕。保健所のお世話になったが、淋しい悲しい罪な思い。

赤ちゃん猫を殺すことには違いないのだから・・・

休みの日、畑でみみがのんびりしているのを見つけた僕は、

ふざけ半分に、よく追っかけごっこをした。

みみもそれと知ってか、あっちこっち逃げ回る。

僕をからかっているようだった。

他愛のない遊びにすぎなかった。子どもに返った二匹だった。

・呑兵衛の犯したこと

数匹の赤ちゃん猫とみみ、そして酔っ払っていた僕。

寝床の上で僕は、生まれたばかりの仔猫とじゃれていた。

乳首に群がっている仔猫たちと、それを見つめるみみの優しい眼差し。

ほのぼのとした光景にいつのまにか寝入ってしまった。

起きて周りを見回すと、赤ちゃん猫もみみもいなくなっている。

階段下の物置部屋を開けてみると、

みみが、赤ちゃん猫をていねいに全身くまなく舐めまわしていた。

赤ちゃん猫は、なにも知らずにすやすや眠っているようだった。

ふふっと笑った。しかし、

どことなく様子がおかしい。触ってみた。

冷たくなっていた。赤ちゃん猫は死んでいた。全部。

母親が子どもを殺す。愛情を独り占めするために。

そんな話を聞いたことがあった。

僕とじゃれあっていた赤ちゃん猫に、

みみが嫉妬した?

まさか。

でも、孤独が好きなみみ。ありえないことではない。

みみを、少し恨んだが許してやった。

平凡な日々が過ぎて行った。

みみの名付け親のおふくろに、あのことを話した。

それは違う、ぼんやりとした口調でおふくろはいった。

仔猫たちは、僕の体に押しつぶされてなくなったと・・・

みみは、冷たくなった赤ちゃん猫を一匹一匹くわえては

階段下の物置部屋に運んでいった。ものも言わずに。

「飲むな、とは言わん。じゃが、過ぎんようにのお・・・」

ため息をつきながら母はこぼした。

みみを探したがいなかった。

・真っ赤に光る瞳

古いソファにニコリともせず横向きに座っているみみ。

チョチョッと、口笛を鳴らす。振り向いたみみ。パシャ。

写真を撮った時のフラッシュの光が

みみの深緑の瞳に反射して、真っ赤に映っていたその写真。

寝床の前に、飾っていた。

「みみしゃん」

出張先では、毎晩呼びかけては眠りに就いた。

晩年。

猫エイズに感染したが、長生きした。15年は生きただろう。

最後は、野良犬とケンカして死んだらしい。

死に目には会えなかったけど、すまんかったのお、、、「みみ」

ひと晩、みみの亡骸といっしょに寝た。

瞳は瞼に閉ざされていた。

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